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2009年6月17日 (水)

【10】本庄高等学院、それは山の学校 そして今

23期生 伴 卓さん

他の人より少し長かった高校生活を終えてもう3年目になる。そんな自分もついにリクルートスーツに身を包み企業の説明会に足を運ぶ。一方で、最近はOBの方々と会う機会も少しずつ増えている。まさに光陰矢の如し。自分の過去を振り返った時に感じる速さと、毎日を過ごすことの速さの差が、少しずつではあるが狭まってきているように感じる。そんな時間の推移の中で、紛れもなく本庄高等学院時代は私の財産である。

私は幼いころからやんちゃで、どちらかといえば親の手がかかる子供だった。正直今も変わりはないのかもしれない。そんな自分に対して両親はよく「山の学校に入れるぞ」と私を諭した。この“山の学校”とは一体何なのか。
私が幼少期を過ごした愛知県には不真面目な子供たちを一か所に集合させて教育を行う機関があった。それは四方を山に囲まれ、とても規律の厳しい学校である。もちろん両親とも離れ、子供の好きなものもなく、まるで刑務所のような環境で生活を強いられる半ば更生施設のような学校である。
という設定のお話だ。実際にこのような教育機関があるかは不明だが、当時はこれに近い施設の新聞記事の切り抜きを両親が箪笥にしまい、私が何か悪さをするとこの記事を片手によく叱られたものだ。といっても幼稚園から小学校1年生ぐらいまでの話である。

それから何年という歳月が経ち、大学に入ったばかりのころである。東京で下宿をしている私は寝る前にふと高校時代を振り返る中で、この“山の学校”という言葉を思い返した。「親元を離れ、周囲を山に囲まれ、規律のある生活…」まさに私が子供のころに聞かされていた“山の学校”であった。そんな山の学校も今となっては自宅から通学する生徒が多い。本来、本庄高等学院は全寮制のイギリスのパブリックスクールのような環境を創設時は目指したと聞いているが、現在の本庄高等学院には当時のモットーのかけらもない状態が蔓延ってしまっている。しかし、その創設当時の意思の端くれであるのが自分だ。

OBの方はご存知のように、本庄高等学院には寮がある。正直言ってパブリックスクールの様な、また刑務所のような規律の厳格な寮はもはや存在していない。自分が在籍していた時はおろか、1期生の先輩たちの話を聞く限りでも、校風はいまだ健在というところである。しかし、その環境があるからこそ、より逞しく、雑草魂に満ちたOBを輩出できているのだと私は思う。世間的には寮に下宿している学生は「寮生」と呼ばれるのが普遍的であるが、「ホーム生」と呼ぶのが本庄スタイルである。これに付随して「管理人」のことを「ホスト」と呼ぶのもどこかおもしろく、違和感を抱く人も少なくない。

私は「早稲田大好き人間」として本庄高等学院に入学した。しかし、残念なことに卒業する頃には、少しその熱はかなり冷めてしまっていた。何も高校時代が長いことが原因ではない。いろいろな要因が私をそうさせているように感じていた。しかし、ホームカミングデーで歴代の先輩方と肩を並べ、校歌を歌っている時に泣きそうになった。途轍もなく大きな想いが自分の中に秘めていることを知った。つまるところ、やっぱり自分は早稲田大好き人間なのである。好きな色はエンジだ。血液の色もエンジだろう。こんな想いを思い起こさせてくれたのはやはり早稲田大学という最高学府ではないだろうか。
そこは早稲田大好き人間の集まりである。いつの間にか校歌を覚え、時に知り合いでもない人と肩を組んで紺碧を歌う。「早稲田」という仲間意識の強さである。もったいないことに集まり散じてしまうのも早大生の特徴である。しかし、私たち本庄生には、他の大学生にはない3年間以上の繋がりをルーツに持っているのである。さらに言えば、ホーム生にはより強固な繋がりがあるのではないだろうか。自分がホーム生であったことに優越感を感じる時である。年々ホームが閉鎖傾向にあるのは寂しいことである。欲を言えばもう一度創設当時の想いを奮起させ全寮制にして欲しいくらいである。もしその時が来たらより豊かで頼れる本庄高等学院のOBが天下あまねくこの世に輩出されていくだろう。

ついに来春から女子生徒の輩出がはじまる。彼女たちはおそらく男子学生以上に大学を自分の庭のように闊歩するであろう。困ったことに頭もいい。男子たちよ、悔しくはないか。やっぱり俺たちは永遠に「ワセダマン」でいようじゃないか。

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