2009年7月 8日 (水)
【13】天然記念物
3期生 長谷川 均さん
全国の天然記念物を巡っている。ちょっと、じじくさい趣味だがこれが、非常に面白い。
早大本庄のすぐ近くにも天然記念物はある。本庄早稲田駅から500mほど高崎方面に高架下を歩くと、東富田観音塚という小さなお寺がある。そこにマツがあるので、ぜひ、本庄に来た時には寄ってみていただきたい。
天然記念物とは、文化財保護法や地方自治体の条例で定められた、文化財の一種である。国宝、重要文化財、無形文化財などは聴きなじみがあるだろう。それらと同じ文化財の一つである。国宝、重要文化財などが、人間が作り出したものに対して、名勝や天然記念物は自然のものである。国宝にあたる特別天然記念物が75件、重要文化財にあたる国指定天然記念物が1000件弱登録されている。そのほか都道府県指定がそれぞれの県で数十件づつ、市町村指定を加えると1万件以上になると思われる。
そのうち七割が植物、残りが、動物と鉱物、地域全体を保護する保護区である。植物も自生地等を除くと、いわゆる巨木がそれにあたる。すなわち、天然記念物の過半が巨樹巨木であると考えて差し支えない。
自分は植物や木についてはあまり詳しくない。木を見ても、椎か樫か欅か区別がつかない。天然記念物巡りを始めて、少しづつわかるようにはなってきたが、いまだによくわからない。
では、なぜこんなじじくさい趣味をもったかという経緯は、以下のとおりである。
今から3年ほど前に、長女が小学校の夏休みの自由研究で、さいたま市内の天然記念物を探すというのを選んだ。長女がなぜそのようなテーマを見つけてきたかわからないが、これに親がはまってしまった。さいたま市は浦和、大宮、与野、岩槻が合併した大きな市域をもつため、市内の天然記念物だけでも84件存在する。交通手段としては、自転車で十分にまわれる範囲であるが、80件以上となると尋常ではない。当然、夏休み中には終わらず、子供の宿題としては、主だったもの20件位の写真と地図でポスターを作り、自由研究としてはかなりの評価を得た。
そこで、終了していればよかったのだが、どうも、全部巡らないと釈然としないものがあるのは人類共通の遺伝子か。夏休みが終わった後も、週末に天然記念物巡りを続行した。そうこうするうちに、さいたま市内だけではとどまらず、埼玉県内、全国へと発展していってしまった。鉄道乗りつぶしや、国道走りつぶしと似たような心理状況なのであろう。
天然記念物巡りは事前準備が重要である。というのは、特別天然記念物や国指定天然記念物は地図にも記載されているし、近くにいけば、観光名所として看板も完備されている。一方、市町村指定となると、地図には出ていない、看板もない、そもそも、その地方自治体の文化財一覧が手に入らないので天然記念物の存在すらわからないのである。それゆえ、地方の天然記念物を見つけるのは、インターネット、地図、図書、パンフレットなどを駆使して、所在地を特定しないことには非常に困難である。この辺にあるだろうと思って、何時間もかけて行っても見つからないことがありうるのである。
最近は、インターネットにより、現地に行く前にかなりの情報が入手できるのが便利である。というか、インターネットがなければ、このような趣味は成立しなかったと思われる。地図ソフト、国土地理院の地形図、グーグルの航空写真などを駆使して事前に、あたかも一度訪問したような状態まで情報を仕入れて、はじめて、現地で実物に遭えるということである。天然記念物本体もさることながら、事前の準備、地図を見るのが半分趣味といってもよいかもしれない。
このようにたくさんの天然記念物が全国にあるため、残念ながら、一生かかっても全部を制覇することは、不可能である。実際、立ち入り禁止の区域もあるため、行きつぶしは完成しない。いわばゴールのない趣味である。逆にみると、陸上には2キロ四方に1つ位は必ず天然記念物が存在することにもなる。これは、趣味としてはやりがいのあるものである。
週末に天然記念物目的で旅をするのは当然のことながら、例えば、違う理由で旅をしたときや、出張に行った時にも趣味を実行できるのだ。釣りキチは、出張に行くときに釣竿をかばんに潜めて行くときくが、それと同様に天然記念物のマップを持っていく。もちろん出張は業務であるからして、勤務時間は仕事に専念する。宿泊のある時は、朝早く起きて近くの天然記念物を巡ったり、日帰り出張の時は、早起きして早い電車で行って、集合時間前に巡ったりということができる。(厳密に言うと旅行行程外で交通事故にあったりするとまずいのでそこは、自己責任ということで)
だがしかし、お気楽に回れるものだけではない。たとえば、南硫黄島、難易度AAA物件だ。これは、無人島全体が、天然記念物。本土から1000km以上も離れた絶海の孤島で、海面から垂直に標高1000mの山がそびえたつ。これは、ほとんど、冒険家か国土地理院の測量隊かなにかでなければ到達不能である。もうひとつ、身近なのに、難易度ランクAのものもある。女子高の校庭にある巨木。これはきびしい、デジカメをもってうろうろしていると、まず、通報されてしまうだろう。ちなみに、身近なところでは浦和第一女子と熊谷女子高に天然記念物が存在する。浦和一女は文化祭に娘を連れてもぐりこんだ。熊谷女子は早朝に、門の外から撮影した。あまりほめられた行動ではないが。
天然記念物巡りは、お金もかからず、時間もつぶせて、一生できて、なかなかの趣味と考えている。あまり、他にやっている人もいないようで(巨木巡りなどの人はいて、かなりオーバーラップするが)オリジナリティもある。
ということで、まったく、他の人に勧めることのできない趣味だが、自己満足の世界として今後も続けたい。
最後に、これまで訪問した天然記念物のリストは、「さいたまの天然記念物」をご覧ください。
「同窓生リレーエッセイ」カテゴリの記事
- 【83】稲稜祭での自主映画上映を終えて(2016.11.30)
- 【8】学院の変化@17期(2009.06.03)
- 【7】応援王国の中の早大本庄応援部(2009.05.27)
- 【6】稲稜祭の想い出(2009.05.13)
- 【5】本庄食(2009.04.29)
■コメント