2011年8月 3日 (水)
【59】オレはプロだから。
13期生 山下 隆輝さん
私は自分の自転車の運転に強い自信を持っている。
特に根拠はなく、ただの思い込みだが・・・。
それでも、私が自転車の運転に自信を持っているのは、本庄高等学院での3年間の自転車通学の経験によるところが大きい。いや、それが全てと言っても過言ではない。
学院に隣接した本庄早稲田駅が完成して、新幹線通学の学院生が増えたと聞いているので、最近はそれほど多くないのだろうが、13期の私が通学していたころは、自宅から通学するいわゆる宅通生は、ほぼ全員、高崎線本庄駅から学院の校舎まで自転車で通学していた。ホームステイの生徒も自転車を利用していたので、自転車通学率はほぼ100パーセントだろう。
3年間の自転車通学ではいろいろな経験をする。特に宅通生は、アーバンダッシュ(映画の方ではないので注意)もするので、帰宅を急ぐ余り、尚更稀有な経験に出くわすことになる。
大久保山の学院敷地内の下り坂で、スピードを出しすぎてカーブを曲がりきれずに植え込みに自転車ごと突っ込んだ友人を目の当たりにしたこともある。そのとき私は「お大事にー!」(「ごくろーさーん!」だったかも知れない。)と捨て台詞を残して自分は快速アーバン号に滑り込んだ。今思えば残酷な話だ。
しかし、かく言う私も、朝の駐輪場で、友人の自転車に気付かれないように後方から自転車で忍び寄り、友人の肩口にパンチをお見舞いするというくだらない遊びをしていたところ、パンチを空振りしてバランスを崩して膝から自転車ごと倒れて膝を痛め、そのまま学院に行かずに本庄の病院に直行したことがある。病院のレントゲン室では「自業自得」という言葉が頭の中をグルグルと回っていた。今思えば、何と馬鹿なことをやっていたのかと恥ずかしくなる。
また、当然ながら、3年間で自転車運転技術は格段に向上する。3年の終わり頃に行った学院の敷地内での実験では、両手放しは当たり前、片手運転で立ちこぎや、両手放しでの立ちこぎまでできた。ほとんど中国雑伎団状態である。
それと同時に、自転車運転の怖さも学ぶ。自分の脇をトラックがうしろからすり抜けて行く際、ほんの数センチの距離で擦れ違って行くトラックに背筋がぞっとする思いをしたこともある。ものすごいスピードで走っている最中に突然路上のクギで自転車がパンクしてコントロールが効かなくなり急ブレーキをかけて何とか転倒せずに済んだこともある。以降は、ブレーキの調子には気を遣うようになり、そこから自転車全体のメンテナンスにも気を遣うようになった。
そのような様々な経験を3年間積み重ねると、自ずと自信のようなものが身につき、自転車の運転に自分なりのこだわりのようなものも出てくる。
例えば、私は、マニュアル自動車の如く自転車のギアチェンジを頻繁にする。ペダルの軽いギアからスタートしてスピードに乗ってくるとペダルの重いギアに徐々に変えていく。一旦止まると軽いギアに入れ直す。常にカチャカチャさせている。傍目には鬱陶しいだろうが、こだわりなのだからやめられない。
そして、そのこだわりを人に指摘されると「いや、オレはプロだから。」などと訳の分からないことを言う様になる(のは私だけか。もちろん自転車に乗って報酬など貰ってはいない。)。自転車に対する短い時間では語り尽くせない愛着と自信が「オレはプロだから。」という言葉に集約されているのである。とにかく自転車に関することには根拠のない自信がついたことは間違いない。
そして、極めつけは自転車での埼玉縦断である。卒業時自転車を処分するか持って帰るか選択することになるが、私は迷うことなく我が愛車を当時自宅のあった浦和に持って帰ることにした。いや、正確には乗って帰ることにした。車に積んで帰る生徒もいたが、自転車に乗って帰る生徒も多数おり、私も友人2人と自転車に乗って本庄から浦和まで帰った。昼頃に学院の校舎を出たにも関わらず、浦和に着いたのは午後8時近かったと記憶している。懐かしき、良き思い出である。そんな経験をしていて自転車に思い入れが生じないはずがない。
そんなわけで、私は、学院を卒業して15年近くなる今でも、自分の自転車の運転には自信を持っている。
今乗っている自転車は、ブリジストン製のアルベルト。ペダルとタイヤを連動させる、通常は鉄製のチェーンの部分にゴムを使用しているタイプだ。私が学院の入学時に購入した自転車と同じ、思い入れのあるシリーズである。普通のママチャリならば1万円も出せば買えるこのご時世に、この自転車に5万円も払ってしまった。
しかし、それもこれも、理由はただ一つ。「オレはプロだから。」なのである。
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■コメント
君と埼玉縦断してもう15年か。光陰矢の如しですな。しかし、未だに自転車にそんなに執着するとは、熱心だな。かくいう僕も、近所に出かける時は「ママチャリ」(娘が乗る補助席付き/くまちゃんぬいぐるみ搭載型)で疾駆してます。
投稿: いぬ | 2011年12月10日 (土) 02時13分
自転車は学院生のアイデンティティーだから外せないよね。まさに「執着」だね。
プロとして未だにメンテナンスは欠かしませんよ!!お子さん連れなら尚更安全運転でね!!
オレたちプロだからさ(笑)!
投稿: 山下隆輝 | 2011年12月13日 (火) 21時54分