2011年11月 9日 (水)
【65】校舎のこと
1期生 竹鼻 恭一さん
私は現在、建築の設計という仕事に携わりながら、週末はラグビースクールで子供たちにラグビーを教える、という日々を送っています。
建築とラグビー。今の自分にとって、とても大切な基盤なのですが、この2つに出会えたきっかけが、本庄高等学院への入学でした。
創成期の本庄ラグビー部については、同期の洲戸 渉君が素敵なエッセイ「第14回:本庄でのラグビーとの出会い」を書いていますので、私は建築、すなわち本庄高等学院の校舎との出会いについて語りたいと思います。20期生の白井 純平君が「第28回:校舎」というエッセイを寄せてくれていますが、私のは、その「前史」です。
我々が1期生として入学した時点では、校舎はA棟・B棟・C棟の3棟しか完成していませんでした。
2学期を迎える頃に、体育館以外の残り4棟がようやく完成、大教室棟で、校舎の設計者である穂積信夫先生(理工学部建築学科教授=当時)の特別講義が行なわれました。大教室棟の杮(こけら)落としだったような気がしますが、神澤学院長(当時)の特別講義(塙保己一や岡部六弥太の話)の方が先だったかもしれません。
タイトルは「本庄高等学院の設計について」。
ある意味、人生で最も感銘を受けた講義と言っても過言ではありません。
建築に関して全く無知だった私でしたが、講義の最後の、「この話を聞いて建築に興味をもった方は、ぜひ、研究室に遊びにいらしてください」という穂積先生の言葉を真に受け、大久保キャンパスの穂積研究室を訪ねたのが高1の秋。新聞部を立ち上げ、校舎に関する記事を書きたいと言っていた、同期の森脇君同行の訪問でした。(結局、その記事は見たことがありません。)
穂積先生や、当時助手だった古谷誠章さん(現 理工学部建築学科教授)のお話を伺い、訪問時に研究室で体育館の模型を作っていたカッコいい大学院生の姿に憧れ、ますます建築への想いを強くした私は、結局、2年半後、本庄から理工学部建築学科に進み、大学院で穂積研究室に入ります。
自分で言うのもなんですが、純粋無垢な高校生をみごとに建築に嵌めたのが、本庄高等学院の校舎とのその設計者だったというわけです。
穂積先生の講義以降、にわか建築少年となった私は、新設されたばかりの図書室の定期購読雑誌として、「新建築」という建築雑誌をリクエストし採用され、休み時間にそれを読みふけるのが日課となり、体育館の工事の監理に来ていた古谷さんから、「本庄近辺の建築だと、磯崎新さん設計の群馬県立近代美術館がお勧め」と教わると、赤城おろしに抗しながら高崎まで自転車を走らせ、お目当ての建築を訪ねたりしたものです。高2の頃に始まった、図書館本庄分館(これも穂積研究室の設計)の工事にも胸躍らせました。本庄高等学院の校舎がもたらしてくれた、建築との蜜月でした。
が、その校舎が、来春で、本庄高等学院の校舎としての役割を終えようとしています。
思い返すと、開校当初から「校舎問題」という言葉があったように、本庄の先生方の多くは、あの校舎をあまり気に入っていませんでした。
現在、大学グランド(旧称ですね)横のテニスコート跡地に建設中の新校舎は、実を言いますと、私が勤める鹿島建設の設計・施工の建物です。それはそれで、大変な栄誉ですし、新校舎だってなかなかの建築なのです。しかし、どこか敗北感というか、あの校舎の存続に、自分は何もできなかったという思いを拭いきれません。もし、穂積先生の講義が、本庄の新入生に対して毎年行なわれていたら、校舎、ひいては建築への理解がもっと深まっていたのではないか。(たとえ一握りの生徒でも。)今の本庄の先生方にあの校舎の設計の思いは本当に伝わっていたのだろうか。それを伝えるのが本庄1期生として穂積研究室に進んだ自分の使命だったのかもしれない、と、やっと気がついたのは時既に遅く、会社で新校舎の設計コンペ要綱を手渡されたときでした。
私は、毎年7月、ラグビー部の「石川杯」という集まりに参加するため、本庄のキャンパスを訪れています。
昔のように「建築が大好き」と言えない自分があるのですが、ラグビーの仲間たちとの交歓の合間を縫って、グランドから山を登り、あの校舎と向き合う時、校舎はいつも静かに迎え入れてくれるような気がするのです。そしてまた、少し建築が好きになります。
次の石川杯の頃には、新校舎への移転が終わっています。幸い、移転後も取り壊されるわけではないとのことなので、建築としての第2の使われ方を注視していきたいと思っていますが、果たしてどんな面持ちで再会することになるのでしょうか。まずは、「ごめんな」です。
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