2012年6月20日 (水)
【75】さらば青春の光
2期生 蜂屋 康隆さん
「くそ ハードな1日だったぜ。」男は苦虫を噛み潰したような顔でつぶやいた。せっかくの週末だというのに今日も泥まみれで働いた。『早く家に帰りシャワーを浴びて町にくりだそう。』そう思いながら愛車のアクセルを踏み込む。外はあいにくの暴風雨だ。きしむタイヤの音、ステアリングを握る手に力が入る。今日のボスはなぜか機嫌がよかった。こんなことは年に2、3度のことだ。いやな胸騒ぎがする、気分をかえよう。
『そうだ。今日はあの店にしけこむとするか。』男は愛くるしい笑顔のママの顔を思い浮かべた。その店Sは敵の縄張りのど真ん中にあるが、魅力的なママ、マスターの料理、男には最高の店だった。急ハンドルできびすを返し、アクセルを踏み込む。
Sには思ったとおり敵がうじゃうじゃいやがる。どうやら集会の真最中のようだ。一斉に敵の視線が集まるが男には関係ない。意に介さずいつもの席に一直線に向かった。ざわついていた店が静まり返る。緊張の一瞬だ。やさしい笑みをうかべたママが近づきチェイサーをだした。「今日も暑かったわね。」あたりさわりのない会話だがなぜか安らぐ。「いつもの」男はシンプルにオーダーをし、つかれた体をソファーにあずけた。
しばらくすると目の前に血の色に似た食べ物が運ばれてきた。
男は満足だった。あまりにつかれていたので揉め事はごめんだった。幸いにして敵はそそくさと店をでていった。いつもの食事に舌鼓をうち、一気に飲み物を飲み干した。チェックを済まし家路を急いだ。
汗まみれのシャツをランドリーに投げ入れ、スイッチをいれると同時にバスルームに飛び込む。あいつにやられた古傷がいたむが、それもいい思い出だ。『さてと今日はどんな手で攻めるかな』今夜の戦略をねりながら男は大きく息をはきだした。
「くそ やはり最悪な1日だったぜ。」男は後悔の念をかき消すように声をしぼりだした。なけなしの金が底をついた。『明日こそ、明日こそ。』未来だけが男の唯一の光だった。
以下 約30年前のノンフィクションVer.
「あ~ 疲れた。今日もクタクタだよ。」僕は筋トレもそこそこに銀色のチャリにまたがった。入学した時に親に買ってもらった愛しのチャリさ。デザインに難はあったけど選択肢はなかった。お父さんお母さんありがとう!泥君の大久保山でのチャリ大クラッシュも2年前か。ちょっとあごが曲がったぐらいの軽症でよかったね。そんなことを考えながら泥だらけのジャージのままでペダルをこぐ。いつものように赤城おろしが身にしみる。『しかし今日負けるような展開じゃなかったんだけどなあ。絶対しぼられると思ってたけど、春さんどうかしたのかなあ。まあしぼられるよりいいけど』そんなことより腹減った。田村君や伊藤君の「馬車道でパフェ食べようぜ」は今の僕には魅力的には聞こえない。まずは飯だ。今すぐカロリーを摂取したい。だが今日は週末、ホームステイの飯はない。こんな時にはここしかないっしょ。その名も【レストランし・ば・や】
泥だらけのジャージのまま、一目散に席に座る。ざわついていた本庄高校の生徒が一斉にだまりヒソヒソ話を始めだした。しばらくすると一人二人と帰り始める。『何かい君たち!僕たちのような野蛮人とは飯が食えないとでもいうの?』当時はそう思ったこともあったけど、泥つきのジャージを着た浅黒い男たちとは今の僕は一緒に飯は食いたくない。せめてスパイクは脱いでください。しばらくするといつものように貸切状態になってきた。おばちゃんがしわだらけの笑みを浮かべて水を持ってきてくれた。あっこれほめ言葉です。いわゆる癒し系ってやつですな。「カツスパとチャーハン」腹が減っていて、多少ふところに余裕が有る時の僕の定番!真っ赤なナポリタンに人口着色料たっぷりのウインナーがたまりません。でも今は思うチャーハンは青いお皿には合わないよ。青色は食欲を減退させるんだってよ。しばやのおじちゃん、おばちゃんにいただいた餞別で対戦相手深谷高校のジャージを買ってタックルバックに着せタックルしたよ。僕たちの努力が足らず負けてしまい、花園への夢は散ってしまったけど本当に感謝してます。ありがとう。
ホームステイに帰り、ドロドロのジャージをそのまま洗濯機にイン、悲鳴をあげる洗濯機を尻目にシャワーを浴びずにそのまま一番風呂の湯船にイン、大志君に貸した短パンからお返しにいただいた局部がかゆくなる例の病気もそろそろ治ってきたのか、湯船もあまりしみなくなりました。風呂では感染しないらしいと聞いていましたが被害はありませんでしたか?ホストの皆さん、ホームステイ同僚の皆さんごめんなさい。
風呂をでたらすぐメンツ集めて4人で中国語のお勉強が定番。おいおい10円玉重ねてひそひそ彼女に電話してる場合じゃないでしょ。メンツが足らないじゃないの男の付き合いを大事にしないやつはどうしようもないぞ!そういう僕は先週「2ヶ月もほったらかして、女の子の気持ちがわかってない」と直球でふられたばかりだけど...寂しさを中国語の勉強でまぎらわすだなんて文武両道を実践する高校生の鏡だね。今の僕なら【立直】のかわりに【我愛?】と唱えるけど。僕は毎晩中国語の勉強に熱心に取組んだものです。少々授業料は高かったけど、壁に貼ったGOROのアイドルポスターが僕に言うのさ。「明日は明日の風がふく」ってさ。
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