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2014年4月 2日 (水)

【82】『かけがえのない本庄学院の卒論』

22期生 小塚 俊吾さん

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1 はじめに
 私は4年前に早大理工学部を卒業して就職しました。それからちょうど4年が経ちました。与えられることが多かった学生時代と異なり,社会で働くようになってからは,技術者として何かを送り出すことが圧倒的に多くなりました。これを遂行するためには,自分で基準を決め,検証をし,結論を導くことが必要です。
 大卒の方の多くが卒業論文(卒論)を執筆することで,上記のような流れを経験することになると思いますが,これについて,私の場合は,大学の卒論よりも,本庄学院の卒論での取り組みの方が印象に残っています。
そこで,私の本庄学院での卒論執筆経験を交えて,本庄学院で卒論に取り組む意味を改めて考えてみました。

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2 私の卒論執筆
私は学院生であった当時,本庄学院が学部への進学条件に卒論の提出を求めているのは「大学受験が無い分,何か1つのことについて腰を据えて考えてみたまえ」という本庄学院からのメッセージと考えていました。私の卒論のテーマは『東武東上線のダイヤ改正の必要性と沿線開発について』というもので,過去の東上線の沿線開発の歴史を振り返ることで,今後の沿線開発がどのように進められるのかを予想し,それに見合ったダイヤ(列車を走らせる本数やその時刻)を提案するというものでした(ちなみに,指導教員は地理の青木宏先生でした)。
自分で言うのも難ですが,私は卒論に対して真面目に取り組んだと思います。国土交通省図書館まで足を運んで東上線以外の鉄道路線沿線について調査をしたり,過去20年間の東上線各駅の乗降客数を調査するために東武博物館(東京都墨田区)で資料を閲覧させていただいたりして,自分の足で生のデータを集めることで,自論を形成していきました。
 学部の卒論も面白かったのですが,私は卒論と言えば,本庄学院で取り組んだものを最初に思い出します。学部の卒論では研究室内にすでに存在するテーマの中から自分のテーマを選んだのに対し,本庄学院の卒論ではテーマを自分で決め,調査方法も先生に相談しながらではありましたが自分で決めて,実行に移せたことがその理由です。

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3 事実を積み上げることの重み
「大学受験が無い分,何か1つのことについて腰を据えて考えてみたまえ」という本庄学院からのメッセージであると考えていた卒論ですが,今,技術者として過ごしている者としては,卒論への取り組みは,「事実を積み上げることで何かを生み出す方法」を身に染み込ませる機会であったと思います。
現在,私は技術者として鉄道車両の設計をしています。鉄道車両の設計は,安全を最優先に,過去の実績を踏まえて行う場合が多いです。このような場合,過去の実績と言われるものに偽りがあると,安全を保証できなくなります。偽りの実績を踏まえて設計をしてしまった場合,設計したものによって人々が不安に陥れられることになります。
以上のことから,「事実を積み上げること」を重んじなければならないことは明らかであると思います。このことを,卒論執筆を通して10代後半で意識する機会を持つことができたことは,とても恵まれていたと感じています。

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4 教育機会としてかけがえのない存在である,本庄学院の卒論
 ところで,本庄学院の卒論の特徴の1つとして,テーマが自由であることが挙げられます。一方で,学部の卒論は研究室やゼミによって,ある程度テーマが絞られており,場合によっては全く興味の無いことをテーマにしなければならないこともあります。
本庄学院の卒論では自分でテーマを決められるので,「事実を積み上げることで何かを生み出す」ことに熱中するまでには,さほど時間はかからないでしょう。「事実を積み上げることで何かを生み出す」ということは,技術系に限らず,何かを生み出す際には,誰もが行うことだと思います。その第一歩を本庄学院で踏み出すことは,専門分野の勉強で手いっぱいになることなく,知識よりも,倫理観や基本的な思考プロセスに優先的に重点を置くことにつながるのではないでしょうか。

5 おわりに
 本庄学院開校以来,絶え間なく続いている卒論制度。人に何かを指導するためは,相手の思考レベルを考えることが必要であると思うので,学院生を指導されるにあたり,その道の専門家である先生方であっても,ご苦労は絶えないと思います。しかしながら,教育においては,卒論執筆のように,自分の頭で考え,自分で手を動かすことほど,効果の高い手法は無いと思います。本庄学院卒業生としては,本庄学院の卒論制度がこれからも続くことを願ってやみません。

以上

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